現在、日本競馬で最も活躍している種牡馬はディープインパクトである。
ディープインパクトは、現役を引退したのが2006年末で、2007年に種牡馬入り。
初年度産駒デビューは2010年で、3世代がデビューした2012年には早くもリーディングサイアーの座に輝いた。
以降、2022年まで11年連続でリーディングサイアーとなり、日本種牡馬界の頂点に君臨してきた。
だが、そんなディープインパクトも2019年に惜しまれつつ逝去。
2023年の3歳世代(しかも少数)が最後の産駒となってしまった。
絶対王者であるディープインパクトが不在となれば、次のリーディングサイアー争いが熾烈になってくる。
これまでの傾向からすると、海外からの輸入種牡馬ではなく、
日本で活躍した種牡馬の産駒から、次のリーディングサイアーが現れる可能性が高い。
では、次のリーディングサイアー候補はどの馬だろうか。
今回は、種牡馬としての成功を、血統面ではなく、
・どんな戦績を上げた馬が種牡馬として成功するのか?
という側面から考察してみたい。
では、2001~2015年の芝G1レースの勝ち馬と、その種牡馬としての成績をまとめたのが以下の表である。
※2016年以降のG1勝ち馬は、まだ種牡馬としての成績が固まり切っていないため、2015年までの15年間の結果から考察する。
<どのG1レースの勝ち馬が種牡馬として成功し易いか?>
まずは、各G1レースと、勝ち馬の種牡馬成績との相関を見ていく。
・2歳G1
※ホープフルSがG1になったのは2016年からのため、対象は朝日杯FSのみ。
朝日杯FSの勝ち馬は、種牡馬としての成績は全く振るわない。このレースの勝ち馬が種牡馬として成功する可能性は低いだろう。
・3歳G1
どれもそれなりの相関はあるが、最も相関が高いのはダービーだ。
ダービーの勝ち馬から種牡馬入りした馬は、種牡馬入り後に半数以上が後のG1ホースを輩出している。
皐月賞、菊花賞の勝ち馬からも種牡馬として成功する馬は多いが、どちらの勝ち馬でも、
一発屋では種牡馬として成功する可能性が低く、G1を複数回勝利した馬でなければ難しい。
マイルG1であるNHKマイルC勝ち馬も同様。一発屋では種牡馬としての活躍は難しい。
・古馬中長距離G1
春のG1レースである天皇賞(春)、宝塚記念の勝ち馬よりも、
秋のG1レースである天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念の勝ち馬の方が種牡馬として活躍した馬が多い。
中でも、ジャパンCの勝ち馬、有馬記念の勝ち馬は、ほとんどが種牡馬としてG1馬を輩出している。
・古馬短距離G1
中長距離のG1勝ち馬と比較すると、種牡馬としての成功確率は低い。
最も相関が高いのは、安田記念だ。安田記念以外のG1も勝利している馬が多いこともあるが、勝ち馬の約半数は種牡馬としてG1馬を輩出している。
上記の結果から考察すると、やはり次期リーディングサイアー候補は、
ダービーの勝ち馬か、天皇賞(秋)、ジャパンC、有馬記念のいずれかの勝ち馬から出そうだ。
<今後種牡馬として活躍しそうな馬は?>
・コントレイル
まずは、まだ種牡馬デビューしていない馬から。
何といってもダービーを含むクラシック3冠馬であり、ジャパンCの勝ち馬でもあるこの馬。
前リーディングサイアーであるディープインパクト産駒でもあり、
サンデーサイレンス→ディープインパクトにリーディングサイアーが継承された時と近いものを感じる。
血統はディープインパクト × アメリカの良血という配合であり、サンデーサイレンス系の牝馬"以外"なら多くの牝馬との配合が見込めそう。
リーディングサイアーが獲得できるかは分からないが、種牡馬としての成功はほぼ間違いないだろう。
・キタサンブラック
既に産駒デビューしているが、今後更なる活躍が見込める種牡馬。
ダービーこそ勝利していないが、クラシック3冠レースでは菊花賞に勝利しているほか、
古馬になってからは天皇賞(秋)や有馬記念といった、種牡馬としての成功と相関の強いG1レースを勝利している。
産駒のイクイノックスが2022年には天皇賞(秋)を制覇、更に2023年にはドバイシーマクラシックを圧勝してレーティング世界一を獲得。
また、2023年は皐月賞を産駒のソールオリエンスが後方一気から圧巻レースで勝利し3冠を期待されるなど、大物産駒の輩出が続いている。
父はディープインパクトの全弟であるブラックタイドと、ディープインパクトと直接的な血の繋がりは無いが、
産駒の成績から、この馬が次代のリーディングサイアーに躍り出る可能性もありそうだ。
・レイデオロ
もう一頭、2023年に初年度産駒がデビュー予定の種牡馬。
種牡馬成績と相関の高い、ダービーと天皇賞(秋)に勝利している。
この馬はキングカメハメハの産駒であり、サンデーサイレンスの血を引いていないのが大きな特徴。
そのため、配合相手を幅広く選ぶことができるというメリットがある。
競走馬としての実績やインパクトは、先述したコントレイルやキタサンブラックと比較すると少し劣るが、
ダービーと天皇賞(秋)に勝利したという実績は、種牡馬として活躍を期待するには充分であり、
ディープインパクト産駒などのサンデーサイレンス系の繫殖牝馬と配合できるという点で、この馬にアドバンテージがありそう。
コントレイルの産駒デビューより2年だけ先んじて産駒がデビューするだけに、
そこでの産駒の活躍によっては、この馬がコントレイルとリーディングサイアーを争うことになるかもしれない。
(番外編)
・ドゥラメンテ
2021年に逝去しており、長くリーディングサイアーに君臨することはできないが、
もし生きていればこの馬が種牡馬の頂点に長く君臨していた可能性は高い。(産駒が揃う2023年、2024年なら可能性あるかも?)
初年度産駒が2020年だが、2020~2022年の3年間で、タイトルホルダー、スターズオンアース、リバティアイランドらの活躍馬を輩出。
2歳マイルG1から古馬長距離G1まで幅広いG1レース勝ち馬を出しており、本当に素晴らしい種牡馬だ。
早世が惜しまれるが、残された産駒から時代の名種牡馬が生まれる可能性に期待したくなる。