キングカメハメハ系は、
2004年の日本ダービー勝ち馬であるキングカメハメハから発展したもので、
現在の日本競馬において、サンデーサイレンス系に最も肉薄している血統である。
・ロードカナロア
・ドゥラメンテ
・ルーラーシップ
などが、キングカメハメハの血を引く馬である。
※上記の3頭は、2022年のリーディング上位10頭のうち、
キングカメハメハ直仔を選んだもの。
サンデーサイレンスほど幅広い活躍馬を輩出したわけではないが、
種牡馬としての打率が比較的高い血統である。
(理由は後述)
キングカメハメハは、父であるキングマンボの子を受胎した状態の母馬を
日本に輸入した、いわゆる持ち込み馬と呼ばれる馬である。
デビューは2歳の遅い時期だったが、その素質は高く評価されていた。
その期待に違わず、3歳の春にはNHKマイルCと日本ダービーを勝利し、変則2冠を達成。
その後、故障により3歳で引退したため、G1勝利は2勝に留まるも、
その2戦で見せたパフォーマンスは歴代最高クラスのものであり、
大いに期待されての種牡馬入りとなった。
NHKマイルCと日本ダービーの変則2冠の達成は、
当時、キングカメハメハを管理していた松田国英調教師の悲願でもあった。
「1600mと2400mのG1を両方勝つことが、種牡馬としての価値を最も高める」
という信念のもと、何頭もの名馬でこのローテーションを採用。
2001年にクロフネが挑むもダービーで敗戦、
2002年にタニノギムレットが挑むもこちらはNHKマイルCを勝てず、と、
この変則2冠はやはり厳しいかと思われていたところで、キングカメハメハによる勝利。
そして、その変則2冠を達成したキングカメハメハが
日本競馬史上に残る種牡馬成績を収めていることから、
師の信念は正しかったと言えるだろう。
※実際、2004年のキングカメハメハ以降、1600mと2400mのG1レースを
両方とも制した馬はまだ現れていない。
と書こうとして調べたが、2歳G1の成績を含めると、
牝馬は何頭かおり、牡馬でもローズキングダムが勝利していた。
ただ、2歳G1を除けば、牡馬・牝馬合わせてもアーモンドアイただ1頭。
やはりかなりハードルが高いことは間違いなさそうだ。
種牡馬としてのキングカメハメハは、
自身がG1を勝利した芝の1600~2400mだけに留まらず、
短距離やダートでも活躍馬を多数輩出している。
初年度こそG1馬を輩出できなかったものの、
2年目には、
・ローズキングダム(2歳王者)
・アパパネ(牝馬2歳王者+牝馬3冠馬)
を輩出。
以降は毎年コンスタントに活躍馬を輩出しており、代表産駒は以下の通りである。
・アパパネ …牝馬3冠馬
・ロードカナロア …歴代最強短距離馬
・ホッコータルマエ …ダートで活躍、歴代最多G1(Jpn1)勝ち馬
・ラブリーデイ …5歳になって重賞初勝利、その後G1を2勝した遅咲きの名馬
・ドゥラメンテ …圧巻のパフォーマンスを見せた2冠馬
サンデーサイレンスほどではないものの、
多種多様な産駒を輩出し、現在お日本競馬の血統にも多大な影響を与えている。
なお、冒頭にて、現在種牡馬として活躍しているキングカメハメハ産駒として、
・ロードカナロア
・ドゥラメンテ
・ルーラーシップ
の3頭を挙げ、種牡馬としての打率が高いと述べたが、
その理由を解説したい。
最も大きな要因としては、
・キングカメハメハの血統が、2000年代の日本競馬において、日本にあまり浸透していなかった。
という点が挙げられる。
キングカメハメハの血統は、
父キングマンボ(Kingmambo)
母父ラストタイクーン(Last Tycoon)
母母父ブレイクニー(Blakeney)
と、日本であまり馴染みの無い、主に欧州で発展してきた血統であった。
そのため、当時、日本で猛威を振るっていたサンデーサイレンスの血を引く
良血の母馬と多く配合することができ、サンデーサイレンスの血で飽和しつつあった
日本競馬の中で、一気にその勢力を伸ばすことができた。
先に挙げたドゥラメンテは、母父サンデーサイレンスであり、まさにその代表例である。
また、ロードカナロアは母父ストームキャット、ルーラーシップは母父トニービンと、
両馬ともサンデーサイレンスの血を持っていない。
そのため、この2頭は、サンデーサイレンスの良血の母馬との配合が自由に行える。
このように、キングカメハメハ自身の潜在能力もさることながら、
キングカメハメハの持つ血統構成が、当時、日本で発展していた血と相性が良かったことが、
現在のような血の発展に繋がったと言えるだろう。
そんなキングカメハメハ産駒の種牡馬の特徴は、自身の個性を強く遺伝しすぎないこと。
キングカメハメハ自身もそうだったが、実はキングマンボの系統は、
自身の個性を主張しにくい血統だと言われている。
例えば、ロードカナロアの産駒からアーモンドアイのような中距離のチャンピオンが、
強烈な差し脚のドゥラメンテの産駒からは、長距離の逃げ馬であるタイトルホルダーが生まれており、
これは、種牡馬自身の特徴よりも、母方の血をうまく引き出すことができるため、と言われている。
このように、キングカメハメハ系の種牡馬は、優れた潜在能力を遺伝させながら、
自身の特徴を主張するよりも、母方の特徴をうまく引き出すタイプの産駒が多い血統である。