ポツンとは、道中で離れた最後方に待機し、最後の直線の追い込みに賭ける(ように見せる)戦法である。
※なお、以前、ポツンについて語った記事はこちら。⇒ ポツンを考える
大抵の場合は、後方から思ったほど伸びずに後方のまま終わることが多い。
そのため、馬券を勝っている人間は、ポツンする馬を避けて馬券を買うことが重要である。
そこで、ポツンが発生し易い状況とは、どんな状況かを分析してみたい。
全ての騎手で分析することは難しいので、
(本人には大変申し訳ないが)ポツンの印象が強い横山典弘騎手の重賞レースにおけるポツンを考察してみたい。
※以下、横山典弘騎手のことを親しみを込めてY騎手と略して表記する。
なお、本当のポツンは、道中離れた最後方を追走することだが、
今回は、ポツンの定義は以下の通りとして分析を行う。
・ポツン:レース最初の通過順計測時点の順位が、出走頭数=通過順(※)であること。
…16頭立てのレースの場合、通過順=16の場合が"ポツン"となり、
8頭立てのレースの場合、通過順=8の場合が"ポツン"となる。
但し、JRAレースデータの定義上、以下のようなケースはポツン該当馬ナシになる。
-例外パターンA:最後方が2頭以上で並走状態となった場合
Ex)16頭立てのレースで、通過順15の馬が2頭となり、データ上、どちらが最後方か判別できないため
-例外パターンB:レース出走時に競走除外馬が発生した場合
Ex)16頭立てのレースで1頭除外馬が出ると通過順15の馬が最後方となるが、の場合は出走頭数=通過順の定義から外れるため
※上記以外のパターンもあるかもしれないが、微差だと思うのであまり考えない。
<前提条件>
・分析対象:2013年~2022年の10年間の重賞レース
・ポツンの定義:レース最初の通過順計測時点の順位が、出走頭数=通過順であること
<全騎手平均とY騎手のデータ比較>
まずはコース別で全騎手平均とY騎手のポツン値を比較した。
結果は以下の通りである。
芝コース、ダートコースどちらも全体のポツン率は5%弱(≒20分の1)となる。
※先述の例外パターンがあるため、フルゲートの18分の1を下回る数値となる。
それに対して、Y騎手のポツン率は芝で12.1%、ダートでは19.0%となる。
・・・!?
まず、全騎手平均と比較すると、芝では2倍以上、ダートでは3倍以上のポツン率である。
特に、ダートでのポツン率19%という数値は驚異的な数値で、おおよそ5回に1回はポツンする計算である。
ここから見えてくることは、
・Y騎手は他の騎手と比較して重賞でポツンする可能性が高い。
という事実である。
<ポツンし易い条件の調査>
では次に、Y騎手がポツンする条件に偏りがないかを確認していく。
まずは、距離別のポツン率である。
芝・ダート総じて、距離が延びるほどポツン率が下がる傾向にある。
特に、芝コースの場合、2201mを超える距離(≒2400m以上)では、ポツン率は約5%と、全体平均程度まで下がる。
この数字なら、ポツンの可能性は低いと考えて良いのではないだろうか。
逆に、ダートコースでのポツン率の高さが目立つ。
サンプルが少ないこともあるが、ダート1201~1400m戦でのポツン率はなんと40%。
ダート短距離戦では特にポツン率が上がると考えて良いだろう。
続いて、競馬場別のポツン率である。
※サンプル数が少ないローカル競馬場のポツン率が高く出る傾向にある。
まず芝コースだが、中央4場については、あまり大きな偏りは見られず、どのコースでも10%前後のポツン率となっている。
ダートコースについては、東京コースのポツン率がやや目立つ。
騎乗数や開催レース数の関係もあるが、逆に中山コースではポツンが無いというのが意外である。
このことから、芝はコースを問わず10回に1回程度はポツン有り、
ダートは東京コースでのポツン率が他と比較して高い、と言えそうだ。
(ローカル場はサンプル数が少ないため参考外と判断して良さそう)
<ポツンした場合の好走率>
ここまでの調査では、のポツンは悪のように聞こえたかもしれない。
が、肝心の"着順"に着目した調査がまだである。
Y騎手のポツン率が、他の騎手と比べて高いことを確認したが、
これで好走率が高ければ何の問題も無いのだ。
では、ポツンと好走率の関係は以下の通りである。
やや分かりづらい表になってしまったが、
黄色の部分が、ポツンした馬が好走した(1~3着に入る)数と率である。
・・・衝撃の結果である。
ポツンした馬の好走率について、全騎手平均とY騎手のそれを比較すると、大して差が無かった。
(どころか、Y騎手の率の方が少し低い。。)
個人的には予想外の結果だ。
ポツン時の好走率に関しては、Y騎手の成績 > 全騎手平均 になると思っていた。
非常に残念な結果となった。
<結論>
結論①:Y騎手は、他の騎手と比べてポツンする確率が高い。
結論②:Y騎手がポツンした場合と、他の騎手がポツンした場合で、好走率に大きな差は無い。
⇒この結論を聞いて、皆さんはどう感じるだろうか。
この検証結果だけを見ると、Y騎手のポツンが他騎手と比べて特別に成績が良いわけではなく、
Y騎手のポツンに(敢えて)期待して狙う価値は無さそうだ。
ただ、今回の分析の切り口として、
・騎乗馬が人気馬かどうか
・騎乗馬が脚質転換したかどうか
という視点が全く加味されていないため、
ポツンそのものの是非を問うものではない。
ただ、事実として、結論①と②という結果が浮き彫りになったことで、
やはり、馬券を買う側としては、
・Y騎手はポツンのリスクが他の騎手よりも高い。
・Y騎手のポツンが特別好成績なわけでもないので、もしポツンされたら好走確率は下がる。
という点を押さえておくべきと思う。
機会があれば、また別の切り口でポツンについて考えてみたい。
<補足>
著者は、Y騎手を嫌っているわけではなく、むしろファンだったりする。
どこかの記事で書いたが、特にアドマイヤジャパンやリンカーンと共に、ディープインパクトに向かっていく姿には感動した。
正直なところ、年齢的にこれ以上の上積みは厳しいと思うが、
再び名馬(というより名ライバル馬)の背に乗って、アッと驚く騎乗を見てみたい。
オールドファンとしては「息子に負けるな!」と言いたい。