2020年の3冠牝馬デアリングタクト。
皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念の勝ち馬エフフォーリア。

上記2頭を筆頭に、活躍馬を多数輩出し、2020~2022年のサイアーランキングは常にトップ10入り。
これからの活躍が最も期待されている種牡馬の一頭である。

個人的には、産駒デビュー前から、この馬の種牡馬としての活躍に期待していた。

競走馬としても歴代最強クラスの実力を持っていた(と思っている)ことに加えて、血統的にも、父:シンボリクリスエスというあまり流行っていないため、配合相手の選択肢が非常に広く取れるためだ。

その期待通りに、種牡馬デビュー以降、常にリーディング上位に位置する活躍を見せているが、一点だけ、大きな懸念点(問題点?)が囁かれている。

それは「エピファネイア産駒は早熟(早枯れ)だ」という説だ。

確かに、先述した代表産駒2頭も、最後に勝利したのは3歳時であり、
4歳以降、好走はするものの、勝ち星を挙げることができなかった。

だが、エピファネイア自身は、初G1制覇は秋の菊花賞で、4歳秋にはジャパンCを勝利しており、早熟といった印象はあまり無く、産駒が早熟になるというのは今一つ合点がいかない。

そこで、今回はエピファネイア産駒が本当に早熟なのか?を考察してみたい。

<考察①:本当に早熟の産駒が多いのか?>

現在、目立っているG1級の代表産駒が早熟なだけで、それ以外の産駒は早熟ではない可能性は無いか?という切り口で調べてみた。

・対象範囲 :2023年時点で5歳以上、かつオープンクラスのエピファネイア産駒(=3勝クラス以下の産駒は対象外)
・早熟の判断:4歳以降になって、2~3歳時と同等以上の実績を上げているかどうか

結果は以下の通りである。

※対象頭数13頭をどう判断したかは以下に記載

結論として、全体の傾向としては早熟とは言えない、となった。

<考察②:早熟⇔早熟でない に血統的な傾向はあるのか?>

では、早熟か早熟でないかを見分ける要素として、血統的な特徴があるか?を確認してみた。

各馬の母父、母母父は以下の通りである。

結論としては、血統的な傾向はほとんど見られなかった。

※母方にサンデーサイレンスの血を持つ馬が多いが、それだけ日本競馬界にサンデーサイレンスが浸透していたということ。。

<考察③:なぜ早熟のイメージが強いのか?>

これまでの調査結果から、エピファネイア産駒=早熟というのは、数字的には誤りであると言えそうだ。
(「早熟」の捉え方によるかもしれないが)

では、なぜエピファネイア産駒は早熟のイメージが強いのかを考えてみたい。

まず一つ目の説として考えられるのは、
・代表産駒の2頭が4歳以降にG1を勝利できなかったこと
である。
実際、エフフォーリアとデアリングタクトの2頭については、戦績を考えると早熟と判断されても仕方ない。
それ以外の産駒はG1レースに勝利しておらず、よりその2頭の印象が際立つため、エピファネイア産駒は3歳までがピーク(≒早熟)、と印象づけられたのではないだろうか。
※特に、3頭目の代表産駒と言えるアリストテレスが、G1菊花賞で惜しい2着になった後に、4歳以降の活躍が案外だったことが、早熟のイメージを決定づけたように思う。

もう一つの説として考えられるのが、
・調子を崩した or オープンで壁に当たった時に立ち直れない産駒が多いこと
である。

代表産駒の2頭も、4歳の初戦で敗れて以降、3歳時のパフォーマンスを見せることが出来なくなった。
(デアリングタクトの4歳初戦はG2金鯱賞だが、その前のG1ジャパンCのパフォーマンスと比較すると明らかに物足りなかった)

第3の代表産駒であるアリストテレスは、3歳のG1菊花賞で2着となった後、続けて4歳初戦でG2を勝利したが、その次のレースで着外となり、以降は精彩を欠く走りが続いている。

対して、5歳でG2を勝利したイズジョーノキセキは、3勝クラスを勝利した直後にG2に勝利と、勢いそのままで重賞を勝利している。
(その後は敗戦が続いているが。。)

このように、調子の良い時は続けて好走するが、休みで調子が崩れたり、レース条件や相手が変わって大敗を喫したりすると、復活できない馬が多いように思う。

その活躍のピークが3歳に来てしまう馬が、現時点での代表産駒となってしまっているため、エピファネイア産駒は早熟、という印象がついているのではないだろうか。

※個人的には、後者の説を推したい。

<結論> ※個人的見解です。

エピファネイア産駒は早熟ではない。

調子を崩したり壁に当たったりした後に復調できないこと、
代表産駒の2頭が3歳をピークに成績を落としたことから早熟の印象が強くなっているが、
4歳以降にピークを迎える馬もいて、それらの馬は古馬になっても活躍する。

<所感>

実は、今回データを調べてみるまでは、著者もエピファネイア産駒の早熟説を信じていたが、このように数字を見てみたことで、エピファネイア産駒の早熟説は誤りである、と個人的には感じている。

もし早熟説が囁かれて、好走が続いているのに4歳以降で人気を落とすような馬がいれば、今後はむしろ積極的に狙っていきたい。

※2023年に狙ってみたいと思ったのは、5歳のジャスティンカフェと4歳のセルバーグ。
 これでこの2頭が活躍したら、この考察は正しかったと言っても良い…?